無事に生まれた娘蕗妹を抱いてほっとしていると、驚いたことに担当医が慌てて、出産室に駆け込んで きました。何度電話しても連絡がつかなかったとのこと。ありがたや。予想外の偶然のはからいでした。 電波をつなげなかったチェンマイの街の神様に感謝(合掌)
頭を使いすぎると胎盤が出るのが遅くなると聞いていたので、心配していましたが、意外と私は頭を使っていないらしく、寝たままですんなり直ぐに出ました。後産は少しも痛くなく気持ちが良くにゅるんと出ました。が、担当医が胎盤が中に少し残っているので、取り出すべきだとピンセットで引っ張り出されたのはとても痛かった。産後ゆっくり待っていればオロがどんどん出てきたので、不要な処置ではなかったのかな?出産に関することは自然のシステムに任せるのが一番。何でも待つこと。待つのが大の苦手な私が待つ喜びを味わえて素晴らしい転換を経験できました。
また、担当医が立ち会っていれば、事前に切開されていただろう、会陰は事前切開しなくとも、無事だったのですが、他の箇所が少し切れていたらしく、縫うことを強くすすめられました。これには強く抵抗できました。縫うためには麻酔だ何だと余計な物を摂取させられ、母乳に影響が出るのも、その後病院に何度か
足を運ぶことになるのも(そして必ず薬を処方されるのも)避けたかったからです。少し勇気が要りましたが、我ながら、とても良い選択でした。母も担当医も、傷口からばい菌が入る「産褥熱」が大いに心配していましたが、年はとっても、栄養の足りている現代女性ですので、水の合わない土地でも全く問題なく経過しました。
そもそも会陰を切開し始めた目的は産後に尿漏れに悩まされないようにだそうです。しかしながら、両者の因果関係は医学的にも証明されていないとのこと。東洋の身体観では体と大地の力を結びつけるという 大事な役割をする会陰を、そんなことで、切られてしまってはたまったものではありません。担当医が不在で 本当に良かった。私はかなり乱暴に生みましたけれど会陰はちゃんと延びてくれました。会陰さんよくやってくれたありがとう。
病院出産のネガティブな面だけ挙げてしまったようなので、この辺りで利点を。蕗妹は生まれた時に窒息していて、すぐに泣きませんでした。そこで、連絡のつかない担当医の代わりに来てくれた、小児科の先生が、カメラのレンズを掃除する時に使うようなゴムの吸出し器を口から入れて、つかえていた羊水を吸い出すとすぐに泣きました。整体ではこういう時は子供を逆さまにして、胸椎7番という骨をトンと叩くと本にありましたが、私ではおっかなびっくりのへっぴり腰で、とてもできそうになかったので、とてもありがたく思えました。
それから、臍の緒の処理も。夫Nugoonが
「血だらけのへその緒を切るのはとてもできない」
と宣言していたので、いざとなったら、私がと思っていたのですが、長い臍の緒のどこで切っていいのか 分からず。これも手当てしてもらったのはありがたかったです。臍の緒はすぐに切らずに一時間はつなげておいた方がいいと整体の本にあったので、そうしてもらいましたが、つなげてはあっても、中身が逆流しない ようにと、しごいてから、大きい洗濯バサミ状のもので留めてしまったので、意味がなかったです。生まれて初めて、始めたばかりの、肺呼吸を補助するためにつなげておくのだと思うのですが、意図が通じませんでした。また、事前に要望書を出して、出産所の部屋は薄暗くとお願いしていたのですが、何度頼んでも、電気は煌々としたままでした。出産中に胎内に集中するためにはやはり、薄暗い方が良いです。
私は担当医の悪口を並び立てていますが、恐らく大学で優秀な成績を修め、最新の機械を使うのを得意としている彼女とは考えが違うだけ*。その担当医でさえ、とても喜んでくれましたし、出産に立ち会ってくれた小児科の医師も、看護婦さんも私の生む姿を見て
「力強い姿にとても感動した」
と言ってくれました。変わったことを主張する私の行為を受け入れて、喜んでくれて本当に優しい方々でした。細かいことにこだわらない、度量の広さをタイの病院で感じました。私の出産したランナー病院では誰でも出産の立ちあいを許されます。他の病院で自然出産した、知り合いのアメリカ人はオーストラリア人のDoula(医療行為以外の様々な治療サポートをする仕事)の指導で出産しました。日本医師会の無いタイ、担当医との交渉しだいで、自分の気の許せる出産援助者についてもらうことができるのです。また、毎月一回の定期健診でも、相談時間に制限がなく、追いたてられることなく、ゆっくり悩みを聞いてもらえます。お陰で、午前中たっぷり待たされるのは普通でした。土曜日でも健診できます。
期待しなかった病院で生んで、思い通りにならなかったことはありましたが、ありがたいことに、
「総じてうまくいった」 という幸せな心地を得られました。ひとえに、頑張って生まれてきた力強い娘と、長い間励まし、協力してくださり、気をかけてくださった方々、様々なお力のお陰。
作家の田口ランディが
「あるテレビ番組で子供が大人に『どうして人を殺してはいけないのですか?』と尋ねて、尋ねられた大人は答えられなかった。でもお母さんなら皆その理由を知っている。なぜなら、子供は本当に必死にこの世に 生まれてくるからだ。そんな大切な命を他人が殺めていいはずがない」 というようなことを書いていたのを読みました。私はそれに加えて、
「森羅万象の応援があって、やっと生まれて来れたこと。自分の命でさえ、自分だけのものではない」 ということを子供を生んで初めて実感しました。子育ては長く
色々なことがあるけれど、このことだけは忘れずに、時々思い出して、気を引き締めて子供と生きていきます。
すべての願い、望み、祈りが叶うこの世界に感謝
*などと書いていますが、出産費用の請求書に、
胎盤を引っ張り出しただけの担当医に、タイにしては法外な診察料が請求されていた上、退院の
際には、蕁麻疹が出たので必要ないと断った抗生物質ほか多量の薬が処方されていたので、一度は病院宛てに抗議の手紙を書きました。ちょっとした怒りも動機としては差別せずに使って動いてみることにしています。抗議の手紙は、結局の所、効果的な宛て先がみつからなかったので、未投函ですが。
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